2011年9月16日金曜日

認知意味論によるメタファー理論  (谷口一美講師 発表要旨)

認知意味論によるメタファー理論
谷口一美(大阪教育大学 准教授)

本発表は、シンポジウム全体の導入として、Lakoff, Johnson らによる認知意味論の枠組みによる概念メタファー理論を中心に概説する。Deignan (2005) の第1章から第3章で、概念メタファーを中心としたメタファー論のアウトラインが簡明に示されているが、その中でもとりわけ、概念メタファーを基に産出される言語表現の比喩性・慣用性の問題について取り上げる。Deignan がコーパスをメタファー研究に適用する必要性の根拠として挙げているのが、概念メタファーに基づき産出される(主に作例による)表現と、実際の使用における使用頻度との齟齬である。しかし、使用基盤モデル (usage-based model) の見方に基づくと、出現当初は新奇で比喩性の高い表現であっても、一定の頻度で使用されることにより、いわゆる「死んだ比喩」(dead metaphor) として慣用化される可能性は残されている。本発表では、使用頻度の低い新奇なメタファー表現が「生きた」概念メタファーの機能の一端を示すと捉え、比喩的意味の動態的な側面に対しどのようなアプローチが可能であるか、検討課題を示したい。

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