2011年9月16日金曜日

コーパス研究が明らかにするメタファーの文法 大石亨講師 発表要旨

コーパス研究が明らかにするメタファーの文法―エコロジストとしてのA.Deignan
大石 亨(明星大学教授)

 Deignan (2005)は、コーパスデータは概念メタファー理論と矛盾することはないが、そ
れだけでは説明できない言語的特徴を持っており、この特徴は、予測が難しく固定化され
ているものだということを論じている。これは、言語が歴史の産物であり、多様な表現は
偶然がからんだ特殊なものであるということの必然的な結果である。長い歴史をもった特
殊なもの、そういうものにこそ価値があるのだという発想は、生物多様性を重視する生態
学者(エコロジスト)を髣髴とさせる。
 一方で、英語コーパスから得られる知見は、当然のことながら、品詞転換や単数形と複
数形の屈折による差異といった英語に特有のものにならざるをえないという憾みがある。
発表では、同じような現象が日本語ではどのような手段で実現されるかを例示する。具体
的には、ボイスと格助詞、漢語と和語、複合動詞の有無等による比喩的意味や使用領域の
使い分けを取り上げる。これらの現象が、多義性と単純化、表現性と経済性という矛盾す
る要求の緊張関係によってもたらされているという仮説を提示する。

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